いけばなの展覧会や、大型の店舗ディスプレイによく使われる素材に、「ぼく」と呼ばれるものがあります。
下は、管理人所有の「ぼく」です。
こういうものは、生活の中で結構見かけることがあります。たとえば、料理屋さんの入り口、デパートやブティックのウインドーやディスプレイ、TV番組のスタジオで背景にさりげなく配置されていることもあります。置いとくだけで、何となく様になるオブジェとして使われることが多いです。
「ぼく」は、細かく言えば流木と木の根に分かれます。しかし、大概は総称して「ぼく」と呼んでいます。上の画像は「流木」なのですが、私は通常「ぼく」と呼んでいます。
上の画像の「ぼく」は一抱えもあるような大きさのものです。しかし、手のひらにのるようなサイズのものもあります。
この記事では、「ぼく」初心者の方に、どこでどうやってゲットするものなのかを解説したいと思います。よって、物置に「ぼく」がたまって困ってるようなベテランさんには不必要な記事です。
「ぼく」は、商品になる前の段階ではゴミみたいなものなので、タダでゲットする方法が無いではありません。
流木は、川や海から打ち上げられた木ですので、水面を漂っているときも、打ち上げられた後も、「水辺のゴミ」です。誰の所有権にも属さない物体ですし、それを拾っても犯罪にはなりません。
ただし、私有地は土地の持ち主に所有権がありますので、黙って取ってはいけません。私有地内にある流木が欲しければ、土地の所有者さんと交渉しましょう。相手によっては、「邪魔なので、どんどん持っていって」と言ってくれるかもしれません。
運よく水辺の近くに住んでいる人は、身近にある自然の造形美を無料で入手する幸運を享受してください。私は、水辺に住んでいないので、万単位のお金を出して入手しているのですから。
木の根は、枯れ木の処分や、土地を整地する際に、地中の根を掘りあげたときに出てくるもので、これも通常はゴミです。
もし自分の所有地から根を掘り出すようなことがあれば、それを取っておいて利用することができます。
また、よその土地から出た根っこをゆずってもらうという方法もあります。大型のゴミを「引き取らせて」と申し出るわけですから、これも喜んで「どうぞ!」と言われる確率は高いです。ただし、そのために土をキレイに取りのぞいたり、梱包して輸送したりする手間は、自分でする前提で交渉しましょう。絶対に、相手にやらせて当然と思ってはいけません(そういうことが嫌だから「どうぞ!」と言ってもらえるのです)。もし相手にそこまでしてもらうなら、手間賃をいくら払ったらいいのか相談しましょう。
流木をタダで入手するには、水辺に住んでいる必要ありと上には書きましたが、流木ゲット目的の旅行などセッティングし、それ自体を楽しみに出かけるという手もあります。海でも川でも、自分の好きな場所を選んでください。
ただし、せっかく出かけても、流木が一つも無かったり、あっても好きな形が無いことは十分に考えられるので、そのリスクを承知して行きましょう。むしろ、海や川への旅行がメインで、「良い流木があったら拾おう」くらいの用意をして行くのが賢い方法かもしれません。
「ゲット目的の旅行」は、木の根の方には基本的には使えません。「掘り上げた木の根が並んでいる山」というのは無いので、パッと行って拾ってくることはできないからです。ただ、「知人の山から木の根が出た」など、あてがある場合は、「木の根を受け取るドライブ旅行」などに出かけることができます。
木の根の掘り上げは、大仕事です。
↑このようなものを掘り出す作業を、専門業者に頼んだらいくらになるのか、私は頼んだことが無いので分かりませんが、「安いわけが無い」と断言します。よほどの事情が無い限り、専門業者に依頼して掘らせることはおすすめしません。枝や、流木は、「どんなに高かろうが、あの形に惚れてしまった」というケースがあり得ますが、木の根は掘ってみないと形も分からないのです。それだけのお金をかける気持ちがあるなら、市場に出てきた「高価なぼく」の中から好きな形を選べば良いと思います。
埋まっている木の根をゲットするなら、「すでに掘り出されて、処分予定のもの」に限るのが無難です。
東急ハンズなどの、大型のハンドクラフト店や、ホームセンターでは、流木を扱うところがあります。身近にこのような店舗があれば、店頭を見て、好きな形で程よい価格のものを見つけましょう。
店舗により木材のコーナーにあったり、造形素材のコーナーにあったり、園芸コーナー、金魚・熱帯魚用品のコーナーにあったりします。
自分の行動範囲内のお店を、日ごろからチェックしておくと良いです。急いで買う必要が無いなら、何度か店頭チェックを行い、その店で出やすい形と、値段帯を把握し、「これこそは!」と思ったときに買うのが良いです。
アクアリウムの専門店は、水槽に入れるための流木を売っています。
「水槽用」なので、巨大なものはあまり無く、多くは手のひらサイズです。そのくらいの大きさでかまわない場合は、ハンドクラフト店よりもアクアリウム専門店の方が在庫数が多くて、好きな商品を見つけやすいことがあります。
ネットで買うなら、管理人自身はとりあえずここを見る、というところを列記してみます。(※流木のネットショップについては、こちらの記事でさらに詳しく取り上げています→流木・木の根をネットで買う)
この記事の一番上に貼った画像の「ぼく」も、花屋さんに頼んで仕入れてもらったものです。いけばな人の持っている「ぼく」は、多くが花屋さん仕入れです。これから先、私が「ぼく」を買うとしたら、やはり花屋さんから買うことが多いと思います。花屋さんなら、「こういうのが良い」という希望のものを市場で選んできてくれますし、使用場所に配達を頼んで、直に現場に持って行ってもらうこともできます。また、「ぼく」の納品経験が豊かな花屋さんは、格好の良いものを選ぶ目を持っているので頼りになりますし、「こんな風に使いたいんだけど、強度的に大丈夫だろうか」くらいの相談には乗ってくれます。
初心者の方のために、花屋さんで「ぼく」を買う方法を以下に紹介してみます。
展覧会に納品経験が多い花屋さん、または、大型のディスプレイを請け負っているような花屋さんでもいいです。要は、「ぼく」を仕入れ慣れているような花屋さんを選んで交渉しにいきます。店によっては「できません」と言われるかもしれませんので、そのときには何軒か回ってみましょう。
(いけばな界の人なら、流派の御用達的な花屋さんに行けば、確実に注文を受けてもらえます)
どうしても必要な要素・事項は、必ず伝えましょう。大抵の花屋さんは、「ぼく」のストックなど持つつもりが無いので、「ぼく1点」の注文であれば、「1点」しか仕入れません。つまり、注文主に商品選択の機会は無いと考えるべきなのです。また、手持ちで輸送できないサイズのものであれば、配達してもらえるかどうかも確認しましょう。
巨大な「ぼく」を使って、「撤去後に持ち帰っても、家に置く場所が無い」という場合があります。その場合には、お金を払って大型ゴミに出すか、人にゆずるか、花屋さんに回収してもらうか、というような結末になります。
もしも花屋さんが引き取ってくれるなら、ゴミにもならず、手間はかからず、使用者としては大変に楽です。実際に私は、ページ上の画像の「ぼく」を、一度は「処分してくれ」と頼んだのです(後に勿体なくなって撤回しました)。
花屋さんに回収してもらう場合には、有料か無料か確認しましょう。花屋さんが資材として回収するつもりなら、お客としては「そのままお返しする」という立場ですが、花屋さんが「お客さんがお困りなら、うちが回収してゴミに出します」というつもりなら、「手間賃」を払わねばならない立場になる場合もあるからです。
高級専門花店には、常時「ぼく」のストックがあることが多いです。そういうお店でなら、数多くの品物の中から、自分の目で見て選ぶことができます。
「ぼく」を使いたいけど、高いし、大きくて使用後は邪魔なので、買うのに二の足を踏んでいるような方のために、借りて済ませる方法も紹介しましょう。
いけばなを長くやっているような人で、ぼくを持っている人が知人にいれば、手持ちのぼくを借りられないか交渉してみる余地はあります。もしも快くOKされた場合には、できるだけ先方に手間をかけさせずに借りましょう。もちろん、
「こちらから取りに行き、使用後はきれいにしてお返しに行く」
というのが基本です。また、ビス打ち・釘打ちは遠慮しましょう。当然、色塗りなどしてはいけません。
もしも、持ち主さんが、「古いので、ビス打ちしてもいいし、多少割れたってかまわない」などと言ってくれた場合も、「こんな風にビスを入れ、ここが割れるかもしれません」くらいの事前報告はするべきでしょう。
実は、大規模ないけばな展で使われる「ぼく」は、リースで済ませているケースがあったりします。これは、完全に「花屋さんと交渉してみてどうなるか」ということになります。
私は、実際に何度か「ぼくリース」を使った花展に出ています。しかし、花屋さんは誰にでも「ぼくリース」に応じてくれるわけではありません(だから、番外編としたのです)。その花屋さんと信頼関係があり、「ぼく」はリースだけど、そのほかの花材をたっぷり買いますという、向こうに一肌脱がせる気になる要因を持ったお客さんでいないと、受けてはもらえないと思います。
以前、グループで草月展に出たときに、自治体に許可を取り、都内の某公園内にある樹木系ゴミの置き場に入らせてもらい、「ゴミ=ぼく」を借り受けたことがあります。
使った後のぼくは、釘類を抜いて返却しに行きました。どうせゴミとして粉砕するので、好きに切っても全然かまわないと言われ、傷付けようが何しようがまったく自由でして、借り物のぼくであんなに気を使わないで済んだことも珍しかったです。「文化目的の使用」だったので、「喜んで貸しましょう」という応対だったと記憶しています。(どこの自治体でもそうなのかどうかは不明です)
ぼくを使った後に手元で保管する場合、理想はきれいに包んで物置にでも入れたいところですが、なかなかそうもできない場合は、屋外に置かなければならないこともあります。
完全に雨ざらしだと劣化が早いので、軒下くらいに入れられると良いです。
私なら絶対にしないのは、「土の上に置く」ことです。コンクリや、石畳などの上に置き、土の上に直置きは避けましょう。土の水分が上がってくるのだと思うのですが、下からだんだん腐ってきてしまいます。やむを得ず土に置く場合には、私ならビニールで包みます。