花の情報局

水揚げとは(1)……家庭での水揚げは最低限でいい

水揚げとは、水分不足になった状態の花に、水を効果的に吸わせ、元気を取り戻させる方法です。
家庭で行うのに最適な水揚げ法について、管理人がリアルに知人等に話していることを記事にしてみました。

 

ネットなどで紹介されている水揚げ法を、めんどくさがらずに行える人は少数派

花屋さんでは、各種の水揚げ法を行います。花の飾り方の本や、ネットの指南サイトなどでも、複数の方法が紹介されています。
水揚げ法には、簡単・単純なものから、道具立てを用意しないとできないものまであります。
「根元を少し切れ」くらいなら誰でも問題なくできますが 、
「アルコールに浸せ」
「根元をガスで真っ黒に焼け」
「新聞紙に巻いて、深く水を張ったバケツにどっぷり漬けろ」
など、少し手のかかる方法になると、
「家庭で、そんなことまでやってられない」
という人がほとんどではないでしょうか。(手間のかかる水揚げ法を使い分ける意味はもちろんあるのです。花のプロは手を抜いては駄目です)

全然手間に感じない、むしろ楽しいと感じるのであれば、プロ顔負けの水揚げテクを駆使してもらえれば花も喜ぶと思いますが、おそらく、多くの人は「めんどくさい」のです。
そこで、当サイトでは、より現実的な方法を提案しようと思います。

 

「家庭での切り花の水揚げは、切り戻しと水切りだけで十分である!」

私は以前から、「家庭での切り花の水揚げは、切り戻しと水切りだけで十分である!」と提唱しています。

切り戻しとは、切花を水に挿す前に、根元を鋏などで切ることです。切って、茎の切り口を新しくして、水を吸い上げる能力を高めることができます。

水切りとは、上に書いた切り戻しを、水中で行うことです。水の中で切ることによって、切り口に空気を触れさせず、吸い上げの邪魔になる空気の膜を作らせず、切るときの水圧で、水揚げを促します。

上の二つの方法は、水揚げの中では基本中の基本です。この、最低限の水揚げを、まずは習慣として行っていただき、その上で、余裕のある人だけが「もっと専門的な水揚げ」をすれば良いと思います。
まず、必ず切り戻しを行って、「切り戻しするのは当然」という習慣を作り、その習慣が根付いたときに、「別容器に水を汲む手間くらいは惜しまない」と思えたら水切りをすれば良いです。

 

切り戻しと水切りを勧める3つの理由

切り戻しと水切りを勧める理由は三つほどあります。

一つは、手間のかかる水揚げの情報に、切り戻しと水切りが隠れてしまう傾向が見受けられるから、です。
たとえば。偶然に花の水揚げの情報に触れ、
「バラを長持ちさせる裏技……キッチンのガス火で、根元を炭になるまで焼いてみましょう!」
というような記事などを読んだとしましょう。これを見て、なぜか「バラの水揚げ=ガス焼き」と思い込むケースが多いです。そして、ガスで焼くなど面倒だと思い、実際にバラを飾るときには、何の水揚げもせずに花瓶に挿す、ということになります。
「ガス火までは面倒だけど、水切りだけはしよう」
という人は、とても少ないです。
残念ながら、花の水揚げの情報というものは、まだまだ認知度が浅いようで、「ガス火が効く」と紹介されている花にも「大抵水切りは効く」ということを、推測できる素人さんがあまりいません。(お料理などは、「自分なりに手をかけたり抜いたりする方法」を割と誰でも実践しているのですが、花の扱いはそこまで浸透していません)切り戻し・水切りは、いつでも有効だと知っていただきたいです。

二つ目の理由は、花屋さんでプロの手による水揚げを施され、うまく水が上がった切花には、家庭で熱や薬品などによる本格的水揚げを再度行う必要性が特に無いからです。本来、水揚げは、水不足状態になった花に対して行うもので、やたらに何度も行った方が良いというものでもありません。
じゃあ、切り戻しもいらないんじゃないのか、と思われるかもしれませんが、一度空気に触れた花の切り口は、常に新しくする方が水の吸い上げ力の持続につながるので、生ける前の切り戻し・水切りは、ぜひするべきなのです。

三つ目の理由は、切り戻し・水切りが害になる植物は無いからです。ススキなど、一部の特殊な植物は、水切りだけではどうにもならなかったりするのですが、( ※ススキの効果的な水揚げは、切り口を酢に漬ける、です)切り戻し・水切りをしたために、元気な植物がぐったりしてしまう可能性というものはありません。なので、馬鹿の一つ覚え的に行う価値が確実にあります。

 

切り戻し・水切りは、習慣づければ楽な作業

まずは、花瓶に生ける前に必ず切り戻し、水切りのどちらかを必ずする習慣を付けてしまいましょう。身についてしまえば、当たり前にできる作業です。

植物の茎を切る場合は、よく切れる刃物でスパッときれいに切ると、水を吸う管がつぶれず、水揚げ効果が高くなります。できれば、切れ味の良い鋏できれいに切りましょう。