お正月のお花を自宅用に飾りたいけど、いつ買っていつ飾るものなんだろう?という方のための基本情報を紹介します。
正月花は、元日の朝に美しく整った姿で生けられているべきです。ならば、大晦日の晩にセットしたらいいんじゃないかと思いますが、31日に飾ることを「一夜飾り」になるとして忌む風習があるため、一般的には28日か、30日に飾ることが多いです。
29日が抜けている理由は、「9」=「苦」に通じる、という考え方で「9」のつく日を避けることがあるからです。
ということは、28日か、30日に飾れるタイミングで買えばいいわけです。特に、「何日に買うべし」という決まりは無いので、自分の都合で、「28日か、30日に間に合う」ように買えばいいです。
管理人は、いけばなの稽古場で正月花の稽古を受け、その花材をそのまま正月花にすることがあるのですが、稽古場の都合で、妙に早いタイミングで正月花材をゲットしてしまうと、家で生けても早すぎて正直シラけてしまうことがあります。
早すぎると、花ものが一部交換する必要が生じることもありますし、なにより花を見飽きてしまいます。見飽きると、元日に「新たな気持ち」になどなりにくいです。
場合によっては、早くゲットするのも仕方ないことがあるかもしれませんが、なるべくなら、28日以降くらいに買うほうが、新鮮な気持ちで元日の花を見られます。そして、早く買うなら、花ものは持ちのよいものを選んで買うのが良いです。もしくは、開き直って、30日頃に、花ものだけを挿し直すという考えで生けても良いです。
もしも、事情があって、早めに正月花をゲットしたい場合、花屋の店頭に「お正月セット」のようなものが出ておらず、松の影も形も見えなくても、
「お正月花を買いたいのですが」
と申告してみると、大抵の花屋なら、ちゃんと奥から松が出てきます。松市というのは、毎年12月初旬頃に行われるもので、花屋はその時点で松を買ってきているのです。
どの店も、松は売り切りたいと思っていますから(年が明けると、絶望的に売れないので)松が欲しいお客さんを、断ることはありません。一言、「ありますか?」と聞いてみれば買えると思います。(稀に、店舗とは別の場所にストック花材を置いている店があり、そういうところだと、「今、ここには無いです」と言われるかもしれません)
お正月花は、28日くらいから買う人が圧倒的に多いので、ここでは「28日より前は、タイミング的には早い」ようなタイトルを付けていますが、実際の花屋さんの店頭には、26日くらいから「お正月セット」が徐々に顔を出しています。なので、28日前に買うのは、特におかしいとか、早すぎるということでもありません。ご自身の都合が良いときに買うのが、ふさわしいタイミングだと思います。
※早めに買うより、遅めに買うほうが、松が新しくていいと考えている人がいますが、上に書いたように、松市は12月上旬にあり、その一週間後が千両市です。入荷した日が変わらなければ、28日の松・千両と、30日の松・千両の新鮮さは変わりがありません
12月28日になると、花屋やスーパーの生花コーナーに、セットになって組まれた正月花のバケツがズラーっと並ぶので、それを見てから「そうだ、正月花買おう」と思うくらいで、何も問題ないと思います。
よくあるのが、買おう買おうと思っているうちに、31日になるというパターンですが、下の項にも書いているように、実際には31日に買って生ける人というのは結構いますので、「31日になったら、絶対に生けてはダメ」ということではありません。
もしも、正月花材にこだわりがあり、「どうしてもこれとこれを生ける」とか、「どうしてもこの色を買ってこよう」とか、ピンポイントで花材を指定したいなら、見つけたときに購入するほうが安全です。一日、二日後に同じものを探しても、二度と会えないことがあるからです。
また、「ほどよい値段」のものを見つけたときも、早めに手を打つのが安全です。正月花は、どんどん売り切れていきますので(花屋としては、売り切りたい商品です)、後で買おうとしても、思っている値段より高いものか、変に安いものしか残っていないことがあります。
私は、花屋の大晦日業務を、何度も経験しています。その経験からすると、大晦日でも、結構な勢いで正月花は売れます。正直、28日や29日と、あまり変わり無い数が売れています。ということは、世の中の人は、「31日は、一夜飾りだから避けよう」とは、ほとんど思っていないのかもしれません。
よって、「うちは、そんなにうるさいこと言わずに正月花を飾りたい」と思ったら、大晦日に生けたってよいのかもしれません。
実を言えば、私も風習関係は、まったくこだわらない人間なので、今までに何度も大晦日に正月花を生けています。そういうものを、気にしない人にとっては、「大晦日しか時間が無いなら、大晦日に生けてもいいじゃないか」と思います。
クリスマスケーキなどは、24日も遅い時間になってくると、安売りをし始める店もあるものです。しかし、正月花を、大晦日の夜だからといって、値段を下げる店は少ないと思います。本当に、「これ一束でオール完売」のようなときなら分かりませんが、基本的には「待っていれば、安く買えるかも」とは考えないほうがいいです。
「一夜飾り」が良くないとされる理由は、
という、二つが一般的には言われています。宗派によっても、違う考え方があるのかもしれませんし、地域によっても、違うことが言われているかもしれません。
「一夜飾り」のタブーを気にするタイプの人、もしくは、本人は気にならないけれど、気にする家族が家にいる人が、
「うっかり忘れてしまい、今日はもう大晦日……」
となってしまったら、どうしたらいいのでしょうか。
仕方なく31日に正月花を飾るのか、あるいは、飾ることをあきらめてしまうのか。
上の項の考え方ですと、「一夜飾りのタブー」というものは、「30日までに飾っておくことを推奨する」のが主旨です。(推奨というか、それを当然とせよ、ということかもしれませんが)「31日に花を生ける行為を禁じる」のが主旨ではありません。つまり、「やってはならぬ」ではなくて、「もっと早くやっておけ」です。
ということは、「遅刻するなよ」と言われているようなものなのです。それを、つい遅刻してしまったのなら、「ごめんなさい!」と言って急いで行うのが誠意というものです。31日になってしまっても、そこから正月花を生けて、あくる日の元旦を迎えて良いのです。
もしも、「一夜飾り」のタブーが、「大晦日に花を生けると悪いことが起こるぞ」という主旨なのであれば、「飾らない」という選択肢があり得ると思います。しかし、「遅刻しないでね」が主旨なのですから、「遅れてしまったから、やらないほうがいい」と思う必要はありません。
以上のことを総合しまして、12月25日~1月1日までの間の、お正月花を買うタイミング、飾るタイミングを、日にちを追って書いてみますと、以下のようになります。