正月花の特集ページでありながら、あえて「正月花は必要なのか?」という記事から始めたいと思います。
正月花は、本当に必要ですか?
すごく正直に言いますと、私は、自分の家では、いわゆる正月花は生けないことの方が多いです。
私の場合は、仕事で嫌になるほど正月花を生けるので、自分の家でもそれをする気にならないという理由が大きいのですが、元々イベント用の花にはあまり積極的でない方なので、自発的に正月花を飾ろうという気持ちは、花を仕事にしていなくても、あまり持たなかったのではないかという気がします。
私がイベントごとの花にあまり興味が無いのは、母がそういう花を生けない人だったからかもしれません。雛祭りも、端午の節句も、お月見も、うちでは特に花を用意するということがありませんでした。
もっとも、正月に関しては、子供の頃は暮れからみんなで田舎に行ってしまうのが毎年のことだったので、飾れないし、飾ってもしょうがない、というのが実態でした。無人の家に、正月花だけ生けておいても仕方ないですから。
このような習慣の人は結構いるもので、私の稽古場で、正月花を希望しない人は、「正月は家にいないから不要」という理由が多いです。
別に正月も家にいるが、正月花を飾ろうとも思わないという人、現在は多いのだと思います。
正月花をいらないとする理由は色々あって、
このように複数挙がってくると思います。これらはどれも、非常識な理由とも言えません。
正月花を生ける心の余裕がある人、正月花に少しでも興味がある人、生けることで正月を楽しめる人……そのような人は、ぜひとも正月花を生けると良いですが、現在はそういう人ばかりではなくなっているということです。
「正月に花を生けるのは、年賀状を出したり、子どもにお年玉をあげたりするのと同じように当然」と考える人も多いはずです。
私は、花屋になって最初の年に、暮れの正月花の売れ方にびっくりしたものです。花屋は、大抵「正月花セット」のようなものを組んで売るのですが、これが売っても売っても追いつかないくらいに売れるのです。しかも、「私なら、こんな高い値段は出さない」と思うような束が、ごく普通に売れていくことにも驚きました。正月花は、「3000円くらいはするもの」と思ってお金を出すお客様が珍しくないのです。
人が正月花を飾る理由を推測しますと、以下のようなことかと思われます。
心から楽しんで生けている人もいれば、仕方無しに生けている人もいるのだと思います。せっかく生けるのであれば、少なくとも「飾る楽しみ」を味わって生けないと勿体無いと思います。
今、「毎年生けています」という方は、その習慣をこれからも続けていただけたら、花業界の人間としては大変嬉しいです。心から楽しんで生けているなら、それは最高の習慣です。
誰かに強いられて生けている、あるいは習慣や惰性で生けている方には、
「どうか、ご自身の楽しみを見つけてみてください」
と言いたいです。同じ生けるなら、楽しまないと損です!
正月花は必要なのかという問いに、私ならこうこたえます。
「絶対に生けなくてはならないものではない。無理に生けるものでもない。しかし、生ければ生ける楽しみに出会える。花で祝う楽しみを知らないよりは、知っているほうが多分幸せかもしれない」
それなら生けてみようか、という方は、素人の方向け:正月花の飾り方特集 をどうぞご参考に。