松は、これさえ入っていれば「お正月花」と認識されるほど正月らしく、いかにもおめでたい花材です。
おめでたいとされる理由は、一年を通じて葉を落とさない常緑樹であることから、永遠の命や繁栄をあらわしているとされることと、常緑樹の中でも、特に神のよりしろとされていることなどです。地方によって、また宗派によっても、様々な解釈・理由があります。
素人向け正月花には、とにかくこのような分かりやすいものが花材に入っているほうが、話しが早くていいです。
枝物を扱いなれていない人は、とりあえず若松(下のリストにも挙げています)が良いでしょう。直立した松なので、花瓶に放り込んでも勝手に自分でピンと立ってくれます。値段も、松の中では一番安く、どの花屋でも必ず売っているので、買い易いです。
下に、若松をはじめ、花屋で入手できる松の種類をリストにしました。
- 若松……花屋のお正月束に入っている松としては、最も一般的で、最も安価。素人にも扱い易い(品種ではなく、生産者の作り方の名称が「若松」。本当の品種は「黒松」)
- 大王松……広がりすぎて、素人には扱い難いことが多い。でもかっこいいので、少し枝を生けなれてきた人にはとても愛される
- 根引き松……実は、若松と同じく、品種としては「黒松」。幅を持たせて、若松よりも枝ぶりを作る育て方をする
- 五葉松……花屋での扱いは、若松・根引き・大王よりも格段に少ない。主に、特定のいけばな流派の方が使う花材
- 蛇の目松……あまり花屋の店頭には出てこない、「高級花材」の部類に入る
- 三光松……普通の花屋には、ほぼ置いていない。いけばな教室に納品がある花屋でも、滅多に入荷しない
- 苔松……苔の付いた松。苔を貼って、人工的に作った苔松もある。高額なことが多い(リンク先の苔松は、特に大きいものです)
松以外にも、色や季節感がお正月に向く枝物はたくさんあります。
- 梅……初春を告げる花木として、縁起物とされる。町の花屋でも入手できる(本格派のいけばな作品などには、苔梅が使われることがあるが、これは気軽に買えるものではなく、注文しないと入手は難しい)
- 南天……「難転」に通じて、縁起が良いとされる。少し品揃えが豊富な花屋で無いと入手しにくいが、庭木を切って生けることもできる
- 竹……まっすぐに伸び、繁殖力旺盛な姿が、生命力と繁栄の象徴とされる。また、節目が節操を象徴しているとされる。正月花には、金や銀に塗ったものが使われることもある
- 蜜柑・金柑……黄金色の丸い実がなることから、おめでたい枝物とされる
- 仏手柑……花屋に置いていることはあまりない。高級生花店なら、あるかもしれない。むしろ、デパ地下などで、食料品として売っているものが一番買い易い(食料品コーナーの仏手柑は、枝がついてないけど)
- 椿……常緑の照り葉が、繁栄をもたらすものとしてめでたいとされる
- 柳類……しだれ柳、赤芽柳、ネコ柳、小豆柳など
- 塗り柳(金柳・銀柳)……金や銀に着色した柳。色の華やかさと、「無事を祈る枝」として(中国の故事に因んでいる)、正月花に取り入れられる
- ボケ
- ロウバイ
- 梅もどき
- ウィンターベリー
- サンゴミズキ
いかにもお正月らしい葉物としては、以下のようなものがあります。
- 万年青……葉の内側から、新しい葉と実が出てくることから、子孫繁栄を表しておめでたいとされる
- 稲穂……(葉物というか、「草物」)実った稲穂を束にした状態で売られる
- 裏白……シダの一種。鏡餅や、松飾の飾り付けにも使われる。葉の裏の白さが、「潔白」を示すとされる。また「共白髪」を表すものとして、夫婦愛や、長寿を象徴するとも言われる
- 葉ボタン
- レザーファン……お正月らしいとも言えない花材なのですが、「裏白風」に使えます
以下の花材は、特にお正月らしいとも言えませんが、少し凝ったお正月花を生けたいときに、本格派風に見せるのに役立ちます。
正月花だからといって、和花でなくてはいけないと思うことはありません。下記のリストの花は、ほとんど洋花です。現在の日本の住宅では、もはや洋花のほうが馴染みやすいです。