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実例:長すぎて広がりすぎて、手におえない金銀柳を扱う「最後の手段」

柳類は、長くてひゅんひゅん踊る細い枝が特徴です。お正月花には、柳を金や銀の塗料で染めて、おめでたい花材に仕立てた「金柳」「銀柳」がよく使われます。
安価な正月セット束には、そこそこの長さのものが1~2本入っている程度なので、素人さんでも扱いにそんなに苦労はしないと思いますが、うっかり長くてたっぷりした柳をゲットしてしまうと、扱い方が分からずに結構困ることがあります。

柳の扱いに慣れたいけばな人には、大暴れしてくれる柳は楽しい材料なのですが、生け慣れない素人の方には楽しいどころではない、ということもあるでしょう。困り果てて、「全部短く切っちゃえ!」と思う前に、この記事の「柳対処法」を一度ご参考になさってください。

 

目次 素人の方向け:お正月花の金銀柳の扱いが難しいときの最後の手段

  1. 長すぎる金柳に「しまった!」と思ったら
  2. 結び柳
  3. 紐を解いて「しまった」と思うなら……紐を解かなければいい!
  4. 白のビニール紐を取り換える
  5. ビニタイを目立たなくする
  6. 荒っぽい部分を整える
  7. 松を入れて、一気に正月色を出す
  8. 千両を入れて、完成

長すぎる金柳に「しまった!」と思ったら

金柳には、下のようなとても長いものもあります。

素人の方向け:お正月花の金銀柳の扱いが難しいときの最後の手段

↑これは、いけばな教室の、お正月花稽古で使ったものです。そのため、長いし本数も多いです。長さは正確には測りませんでしたが、私の身長と同じくらいでした。
この長さ・本数の金柳を、完全な素人の方が手にすることはあまりないかもしれません。しかし、もしも手にしてしまった場合、多分扱いに困ると思います。上の画像では、紐でくくられていますが、紐を解いた時点で、「しまった!」と思うことになるでしょう。

画像の柳くらいの長さになると、そのまま花瓶に放り込んでも、剣山に刺しても、細い枝が好き勝手に広がるだけです。結び柳などで、なんとか収拾をつけられる人はいいですが、どうにもならない人は、「枝先だけ50センチくらいに切って使い、あとは捨てる」などということにもなりかねません。
本人さえよければ、「先だけ短く切って少し使い、あとは捨てる」でもいいのかもしれませんが、せっかくの柳が勿体ないですので、困ったときの最終手段を、当サイトでは実作を例に出して提案しておこうと思います。
(玄人的には、この「踊る枝」は魅力でして、決して短所ではないです。長尺の金銀柳は、人気のある定番花材です)

 

結び柳

上の項に、「結び柳」というワードを出しました。
結び柳とは、柳の長い枝を、結んで長さ調節して使う方法のことです。普通に、一重結びするだけでもできるので、素人でも簡単にできます(何重にも丸めて結ぶような方法もありますが、生け慣れない人は、一重結びで十分です)。

ただの一重結びなので、作り方を図解するほどではありませんので、できあがり画像だけを出します。

素人の方向け:お正月花の金銀柳の扱いが難しいときの最後の手段

素人の方向け:お正月花の金銀柳の扱いが難しいときの最後の手段

素人の方向け:お正月花の金銀柳の扱いが難しいときの最後の手段

枝は1本でも、数本でもよく、つかんで一重結びにするだけです。
このサイトの付属ブログで、結び柳の画像がある記事に、いくつかリンクしておきます。

長すぎる柳が、結び柳だけでなんとかなるといいのですが、「何か所か一重結びしたところで、どうにもならない」という場合には、下の項までご覧ください。

 

紐を解いて「しまった」と思うなら……紐を解かなければいい!

では、上の項の続きに戻ります。
上に書いたように、素人の方が長めの柳を扱うときには、包装をほどいて広げたときに、「しまった! これどうしよう?」と気づくのだと思います。(もしくは、解いたものを花瓶に挿してみてから気づく)

最後の手段として提案しますが、
「解いたら、困った物体になった」
ということは、
「解かなかったら、そんなに困った物体ではない」
ということなのです。なので、いっそ「解かない」という方向で扱ったらどうでしょう。
これは、なんとも後ろ向きな解決方法でして、本当は、花業界の人間としては、ぜひとも踊る柳の華麗さ、躍動感などを楽しんでいただきたいところなのですが、扱いきれなくて切り刻むよりは、少しはマシなのではないかと思っての提案です。

解かなければ、長いものをまとめて括った柳も、おとなしく花瓶に直立してくれるのです。

つまり、これ↓が、

素人の方向け:お正月花の金銀柳の扱いが難しいときの最後の手段

↓このように立ちます。

素人の方向け:お正月花の金銀柳の扱いが難しいときの最後の手段

↑根本のところと、上のほうを、紐でくくったまま花瓶に入れました。この状態から、上の紐を解くと、もうありとあらゆる方向に枝がべろーんと広がるだけです。そうなるよりは、いっそこのまま、おとなしく立っててもらえば良いのではないか、という生け方をしてみます。

 

白のビニール紐を取り換える

しかし、紐でくくったままのこの姿では、格好悪すぎる部分が何点かあります。その中で、もっとも不細工と思えるのが、下の部分です。

素人の方向け:お正月花の金銀柳の扱いが難しいときの最後の手段

梱包したままの状態で、美しくも無いし、手抜き感満載です。これらを拭い去るために、白いビニール紐以外のものでくくることにします。
花の仕事で、植物を束ねるツールというと、細いワイヤー、透明なテグスなどが挙げられます。しかし、ここでは、どこの家にも転がっていそうな生活感あふれるもので束ねようと思います。

↓使ったのは、これです。

素人の方向け:お正月花の金銀柳の扱いが難しいときの最後の手段

柳をくくっているのは、パンとかお菓子の袋の口を縛るような、ワイヤー入りのテープみたいなもので、ビニタイという名称のものです。うちにあったビニタイは、たまたまシルバーしかなかったのですが、金柳ならゴールド、銀柳ならシルバーを使うのが、一番目立たなくて良いと思います。
今回は、金柳に銀ビニタイをまいてしまいましたが、「お正月に、金銀でめでたくて結構」ということにしてしまおうと思います。それに、この後の工程で、ビニタイが目立たなくなるようなものを付けてしまうので、それほど気にしなくて大丈夫です。

 

ビニタイを目立たなくする

銀のビニタイを隠したければ、銀のものの後ろに隠すのが良いと思います。
というわけで、金銀水引を使います。

素人の方向け:お正月花の金銀柳の扱いが難しいときの最後の手段

この金銀水引の結び方は、こちらのページで解説しています。

柳の前面に、水引をセットして、ビニタイを巻いた上から銀水引で縛って留めます。

素人の方向け:お正月花の金銀柳の扱いが難しいときの最後の手段

全体を見ると、下のようになっています。

素人の方向け:お正月花の金銀柳の扱いが難しいときの最後の手段

この段階では、まだ相当荒っぽいですが、これから整えていきます。
上の画像で「荒っぽい」と見えるのは、上の方の、柳を丸めて束ねた部分から、小枝がピンピンはねだしているのが無造作すぎるのと、水引が下に引きずりっぱなしになっているからです。この二点を整えることにします。

 

荒っぽい部分を整える

一番上の部分の、はねだした柳を2~3本丸めて、枝と枝の間や水引の隙間に挿しこんで引っ掛け、輪っかを作ります。

素人の方向け:お正月花の金銀柳の扱いが難しいときの最後の手段

たった三本くらいを丸めてみただけですが、このくらいの形にすると、見た人が、
「こういうスタイルに生けたんだな」
と思ってくれます。たった3本で、「まとめるために縛った」から、「こういうスタイルを意図した」に化けられます。
縛った形を流用しました、ではなくて、「最初から、こういうスタイルに生けるつもりでした!」という気分でやってください。

続いて、水引を整えます。
↓こうだったものを……

素人の方向け:お正月花の金銀柳の扱いが難しいときの最後の手段

↓こうします。

素人の方向け:お正月花の金銀柳の扱いが難しいときの最後の手段

↑これでもまだ少々引きずっていますが、長めにしておいて、最後に一番良い長さに切りそろえるのが安全策です。

 

松を入れて、一気に正月色を出す

荒っぽさを修正したら、正月花らしい仕上げに向かい始めましょう。

↓短い松を加えます。

素人の方向け:お正月花の金銀柳の扱いが難しいときの最後の手段

松の存在で、正月らしい雰囲気が突然にアップします。

 

千両を入れて、完成

千両を、水引の前に出してくるように挿しました。

素人の方向け:お正月花の金銀柳の扱いが難しいときの最後の手段

金柳・水引・松・千両という、「正月」を感じさせるアイテムばかりを重ねて使ってみました。ここまで「正月テイスト」を重ねると、どこからどう見ても正月花らしくなってくれます。