花の情報局

花の水揚げとは(2)……「最低限」の水揚げに飽き足らなくなったら

こちらの記事→水揚げとは(1) では、「最低限」の水揚げに徹する方法を紹介しました。

一般家庭では、「最低限」で十分とは思いますが、もっとプロ仕様の水揚げも知りたい、実践したいという人のために、もう少し多様な水揚げの方法も紹介することにしました。
(1)の記事で紹介済みの水切り・切り戻しについても、もう一度あわせて紹介します。

 

目次 花の水揚げとは(2)

  1. 切り戻し(根元を切る)
  2. 根元を折る
  3. 水切り
  4. 水折り
  5. 叩く
  6. 湯揚げ
  7. 根元を焼く
  8. アルコールを使用する
  9. 焼きみようばんを使用する
  10. 酢を使用する
  11. 切花延命剤を使用する
  12. 自分に合った方法を行えば良い

1.切り戻し(根元を切る)

植物の根元を、鋏で切ります。
切り口を新しくすることで、植物が水を吸い上げる力を向上させます。(植物の切り口は、切ってしばらくすると乾燥し、水を吸い上げる力を失っていくためです。一度乾燥したものは、水に漬けても元のようには復活しません。水にもどせば大丈夫、と思い込んでいる人がいますが、大きな間違いです)
どの植物に用いても害になることはない、誰にでも最も簡単にできる基本的な水揚げ法です。

 

2.根元を折る

植物の根元を折ります。
理由は1の方法と同様です。「切る」か「折る」かの使い分けは、植物の茎の硬さによります。硬いものは「折」で、やわらかいものは「切」で行います。
大雑把な考え方として、「菊類と、菊類くらいの硬さのものはすべて折る」と考えていればだいたい大丈夫です。

 

3.水切り

水の中で植物の根元を切ります。
1を更に徹底して行う方法といえます。1の方法では、切ることを空気中で行いますので、切り口が空気に触れ、細かい空気が水を吸い上げる道をふさぐことがあります。それを回避するために、切ることを水の中で行います。どの植物にも有効な、万能の水揚げ法です。

 

4.水折り

水の中で植物の根元を折ります。
2を更に徹底して行う方法といえます。2の方法では、折ることを空気中で行いますので、切り口が空気に触れ、細かい空気が水を吸い上げる道をふさぐことがあります。それを回避するために、折ることを水の中で行います。

 

5.叩く

木槌や金槌を使い、植物の根元を叩いて砕きます。主に、茎の硬い枝ものに用います。
茎が木質レベルまで硬いと、2の方法を行うのがなかなか難しくなってしまいます。そんなときに、道具を使って叩く方が、簡単に水揚げができます。また、叩いて根元の繊維がほぐれることで、水に接する部分が大きくなり、水を吸いやすくなります。
叩き揚げをどの植物に使うかは、プロの花屋さんでも、店によって(または人によっても)くせがあり、かなり異なる場合があります。自分を例にしますと、私が(経験と習慣により)必ず「叩き揚げ」を行うのは、ライラック・雪柳・ヒペリカムです。

具体的な方法は、コンクリートや石などの平らな地面に植物を横たえ、根元の部分を木槌や金槌で叩いて砕きます。
私は、自分の家で行うときは、ベランダにあるレンガの上で、金槌で叩いています。

 

6.湯揚げ

植物の根元を切り戻して湯につけます。熱を加えることで、水を吸い上げる管を収縮させ、水を一気に吸わせる方法です。
手順は、以下のようになります。


植物を新聞紙でしっかり巻いておく(葉や花に湯気を当てないため)

花を水に漬けるためのバケツを用意する

湯を沸かし、沸騰したら、用意したバケツに注ぎ込む(水深1~2cmくらい)

すかさず新聞巻きした植物をお湯に漬ける

数十秒くらいたったら、普通の水深まで水を注ぐ
以上。


更に徹底するのであれば、植物をしばらく水に漬けた後に、根元の茹だって色が変わった部分を水切りすれば完璧。
これも、多くの植物に有効な方法で、私が最初に修行した花屋さんでは、仕入れた品物の6割くらいは湯揚げ処理していました。

 

7.根元を焼く

植物の根元を、ガスコンロの上で直火焼きします。火で直接焦がすことで殺菌し、植物が吸い上げる水を浄化させる方法です。
手順は、以下のようになります。


植物を新聞紙でしっかり巻いておく(葉や花に、ガス火の熱気を当てないため)

ガス火着火!(普通のキッチンのコンロでいいです)

植物を真横に寝かせ、根元を火にかざし、真っ黒な炭状になるまで焼く

火からはずし、水につける
以上。


手順の中の、「植物を真横に寝かせて火にかざす」という部分は、必ず守ってください。植物を縦に持ってかざすと、ガスの熱気が根元から新聞紙の中を駆け上がり、大切な花や葉を蒸し焼き状態にしてしまいます。(人間は、深く考えずに植物を持つときは大抵縦に持つものなので、要注意です)

 

8.アルコールを使用する

植物の根元を切って、アルコールにつけます。数十秒浸した後に、普通の水に挿します。
アルコールは、薬局で売っている消毒用アルコールでもいいですが、わざわざ買ってこなくても、キッチンにアルコール度数の高いお酒があれば、それを使う方が手軽です。
ちなみに私は、勤めていた花屋の習慣にならい、基本的には焼酎を使い、焼酎が無いとウイスキーを使います。

アルコールが効く理由は、植物に刺激を与えて水をよく吸い上げさせ、さらに消毒効果で水をきれいに保つことにあります。

 

9.焼きみようばんを使用する

※焼みょうばんについては、こちらに詳しい記事があります(水揚げ画像つき)→管理人の花道具:焼みょうばん

植物の茎を切り、切り口に焼きみょうばんをこすりつけ、そのまま水につけます。
焼きみょうばんは、スーパーや薬局で入手できます。最も一般的な使い道としては、茄子の漬物の色抜けを防ぐためや、栗の甘露煮の煮崩れを防ぐために利用されます。スーパーでは、漬物用品のコーナーや、調味料のコーナーにあることが多いです。

この方法は、アジサイ(水揚げが悪い植物です)に有効な水揚げとして特に知られています。


10.酢を使用する

植物の根元を切り、数十秒酢につけ、その後水につけます。
酢は、薄めず原液で使用します。特に効果のある植物は、ススキ、段竹、ほおずきなどです(いずれも水揚げの悪い植物ですので、酢上げ処理をしても、普通の切花より命は短いです)。

 

11.切花延命剤を使用する

市販の切花延命剤を混ぜた水に植物を挿します。
延命剤には、水揚げを良くする成分のほかに、水の鮮度を保つ成分も含まれていることが多いので、水換えの手間も少なくて済みます。延命剤は、複数のメーカーのものが出回っていますが、私は「美咲」や「キープフラワー」や「クリザール」をよく使います。


切り花延命剤には、ボトル入りの液体タイプと、水に溶かして使う粉末タイプがあります。私は、溶かす手間が面倒なので、液体タイプを使いますが、粉末の方が使いやすいという人もいるので、好みで使い分けたら良いです。
ちなみに、同じ銘柄の延命剤であれば、液体と粉末で効果が違うということはありません。


切り花延命剤を買える場所は、下記のようなところです。

  1. 花屋さんの店頭……パッと見て無くても聞いてみてください。販売していることの方が多いです。大抵は1銘柄、多くても2銘柄くらいしか置いていないので、選択の余地はほとんどありません
  2. ホームセンター
  3. 大型スーパー
  4. オンラインショップ……例:楽天市場の切り花延命剤Yahoo!ショッピングの切り花延命剤

自分に合った方法を行えば良い

以上、11の方法を紹介してみました。色々試して、
「これなら苦にならない」
「自分的にやりやすい」
と思われるものを実践すると良いです。