雨の日に水をためておいて、それをガーデニングや洗車、初期消火用水などに使える、家庭用の「雨水タンク」というものがあります。
これは、雨水をリサイクルし、水資源を有効活用して環境対策を行いながら、水道代も節約できるというものです。
しかし、いざ購入しようとなると、大きさ、価格、各部の規格などを見ても、何を主に考えて選んでよいものか、なかなか迷うものです。
ここでは、雨水タンクの目的、メリット、デメリットを明らかにし、商品選択のポイントや、主な製品を紹介します。
※このページで紹介するのは、家庭用の、特に水の浄化システムの付いていないもののみとなります。よって、飲用にできる水が取れるものは扱いません。また、トイレの排水に使えるものも、巨大タンクとなりますので、こちらでは紹介いたしません。
◆目次
家庭用の雨水タンクは、シンプルに雨水をためて、それを、タンクについている蛇口から出すだけのものです。なので、溜めた水は飲料水にはなりませんし、お風呂にも使えません。
もっとも一般的な使い道は、ガーデニング・家庭菜園の水やり、池の水、打ち水、洗車、防火用水、などです。
もしも、身近で雨水タンクを使用している人がいる場合は、実物を見せてもらうと良いです。
雨水タンクは、実物が家に来ると、「思いのほか大きい」と感じる人が多いので、どのくらいの迫力があるものか、一度見ておくと参考になります。
ほとんどの雨水タンクは、雨水を雨樋から取ります。(少数ですが、屋根の無いところに置いたタンクに、直接雨水を貯めるものもあります)ですので、何らかの方法で、雨樋から分岐する管を作らねばなりません。
通常、雨水タンクの説明書には、「手持ちのパイプノコで雨樋を切ってください」(最近は、パイプノコは100円ショップにもあります)と書いてあり、ワンタッチで分岐できるような便利工具は、今のところ見られません。
これは、初めて設置しようとするときには、「失敗するのではないか」との不安が先に立つものです。
しかし、やってみると意外に簡単なので、恐れるほどではありません。そもそも、失敗者が続出するような作業なら、商品のほとんどが「購入者自己工事」で出回るはずはないのです。
心配なら、日曜大工程度の作業に慣れている知人などに相談してみると良いでしょう。マメな人なら、設置を手伝いに来てくれるかもしれませんし、大抵の人が「雨樋を切るくらい、誰でもできるよ」と言ってくれると思います。
それでも、本当に心配なら、プロに頼みましょう。工務店や水道工事屋さんに相談してみると良いです。
雨樋にも、規格があります。雨水タンクを購入する際には、雨樋の規格は、必ず確認する必要があります。
雨水タンクは、雨樋を直接切るなどしてタンクにつながるホースを付けますので、自宅の雨樋の規格に、商品が取り付け可能か確認しましょう。
万が一、規格が違っていることに気づかずに、雨樋を切ってしまった場合、素人仕事で、むりやり不恰好にタンクと雨どいをつなぐこともできなくは無いですが、タンクをいためることになりかねませんし、最悪、雨樋の修理代がかかってしまいうことも考えられますので、注意が必要です。(異経ソケットを購入すれば、直径の規格が違うタンクを接続することもできるのですが、自己責任の範疇になります)
一般家庭用の雨樋の種類は、ごく限られています。
ほとんどは、丸樋で、直径55ミリか、60ミリです。角樋のものもありますが、かなり少ないです。したがって、雨水タンクの規格も、丸樋対応が多く、角樋対応が少なくなっています。が、近年角樋対応のものも、角樋に付けるためのジョイント部品も、扱いが増えてきています。
雨水タンクの適正容量を選ぶポイントを解説します。
雨水タンクの最少の容量は、現状では50Lです。最大は、特別な工事が必要でないものでは、500Lくらいです。
消費するときのことを考えると、洗車など、大量に使う場合には、500Lでも、決して多すぎる量ではありません。打ち水なども、広範囲に使うと、思いのほか多くの水を使います。それに、もしものときの初期消火用にと考えるなら、いくらあっても多すぎることはありません。
しかし問題は、容量が増えるほど、タンクが大型になり、確実に場所をとることです。
余裕のあるお庭の家なら良いですが、狭い庭だと、通路がふさがってしまうことなども考えられます。なので、まずは、本体を設置する場所を確認し、そこに置ける大きさを決めるのが現実的な方法です。(タンクと雨樋をつなぐパイプは、大抵50~70cm程度です。タンクは、雨樋のすぐ隣に設置するものと考えてください)
一般的な家で、お庭の中で目障りにならず、邪魔にならない大きさというのは、日本の住環境では50~80L程度ではないかと思われます。
しかし、大は小を兼ねるということもありますので、大きいものを置ける余裕があるなら、100L、200Lのものも、もちろん視野に入れられます。
もしも、雨水タンクの容量を、使用後に変更したくなった場合、タンクを縮小させることは不可能ですが、増設することなら可能なものが多数あります。増設可能なものをあらかじめ選定するのも、一つの方法です。
例えば下は「まるダブル」という商品ですが、
これは、下のように横並びに連結できます。
↑二つのタンクの間が、ホースで連結されています。
上の例のように、連結用タンクは、先に設置したタンクの隣にもう一つ設置することになりますので、そのスペースが必要になります。
雨水タンクの形状は、大きく分けると「縦長型」と「横長型」の二つになります。
◆「縦長型」の例
◆「横長型」の例
現状では、縦型の商品の方が豊富です。また「縦長」「横長」の中間的な形のものもいくつかあります。下は、その1例です。
タンクの形状は、設置するスペースによって選ぶのが、もっとも現実的です。
現状では、横長型は80Lまでのものにほとんど限られており、100Lを超えるものは、ほぼ「縦長型」です。
縦長だと、高さが1mを超えるあたりから、物体として人に与える圧迫感が大きくなり、「邪魔」「大きすぎる」と感じる人が増えるようです。
縦長・横長はどちらでもいいが、あまり無愛想なタンクがあるのは好みに合わない、という人は、値段は少々高くなりますが、下記のような、見た目重視のタンクを選ぶと良いです。
アンティーク風の、樽を模した製品や、本物のアンティーク樽を利用したリサイクルもののタンクもあります。特に、イングリッシュガーデン風なお庭や、ナチュラルテイストが好きな人に好まれます。
逆にシンプルに直線的なフォルムのタンクが、家の壁の一部に溶け込んで良いこともあります。
●容量 140L ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 60×36×99 ●対応雨樋 丸60・一辺が60mmの角樋 ●内部の洗浄 可 ●連結 可
●容量 250L ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 75×51×117 ●対応雨樋 丸55~60・丸76(角用部品もあり) ●内部の洗浄 可 ●連結 可 ●グリーンのほかに白もある
●容量 110L ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 65×40×60.5 ●対応雨樋 丸55~75 ●内部の洗浄 可 ●連結 可 ●雨樋の、右にも左にも接続可能 ●グレイ、グリーン、ブラウンの三色がある
●容量 100L ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 38×38×94 ●対応雨樋 丸:60~100 角:~60 ●内部の洗浄 可能だが、本体を倒す必要あり ●連結 可(リンキングキットが必要)
●容量 227L ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 60×60×96 ●対応雨樋 直径60mm~68mm、内径77mm~直径90mm、直径100mmの丸ドイ、60mm~65mm角ドイ、60mm×80mmの長方形の角ドイ対応 ●内部の洗浄 可能だが、本体を倒す必要あり ●連結 可(リンキングキットが必要) ●連結ホースの長さ 約50cm
●容量 80L ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 80×35×41.5 ●対応雨樋 「丸55・丸60」または「角60」 ●内部の洗浄 可 ●連結 不可
雨水タンクから水を出すのは、特に仕掛けを作らない限りは、「容器に溜まった水を、その容器の下の方にあけた水の出口から外に出すだけ」です。なので、水道のように勢い良く水が出てくるわけではありません。ただ、引力で水が下に流れるだけです。
私たちは、普段、蛇口をひねると水が出てくる「水道」の感覚に慣れているので、初めて雨水タンクから水を取った人は、ほとんど「出てくるのが遅い!」と思うはずです。
しかし、こういうものだと思って使うか、自分でポンプを組み込むなどして工作するか、どちらかしかありません。
何も工作しないで、そのまま使うなら、水をジョウロやバケツに移して使います。雨水タンクについているコックにホースをつないでも、勢い良く水が出ないので、ほぼ意味がありません。