お正月花は、いくらくらいで買えるのか、買うものなのか、基準や相場を知りたい、という方のための基本情報を紹介します。(買い慣れている方は飛ばしてください)
花屋で一番売れる正月花は、切花を何種類かセットして一束にしているものです。
そういうタイプの「正月花セット」の値段としては、800円くらいが最低ラインです。ほとんどの店は、1000円くらいからスタートで、特に安く出ているのが800円くらい、と思ってください。
800円くらいの切り花で、正月花になるのかと聞かれるなら、私なら「相当な簡易的正月花です」と答えます。
大体、1000円を下回ると、松を入れることが厳しくなります。松が入っているとすれば、若松のごく小さなものが1本入っている程度です。松が付けられない場合は、「小菊・金銀柳・お正月ピック」などで、お正月テイストを強調した束になります。
当然、ボリュームもあまりありませんから、せいぜい一輪挿しに生けるくらいです。盛り花にしたいなら、手のひらサイズの「ミニ花器」でちょうどいいくらいになります。
かなり小さい正月花ですが、「そんな程度でうちは十分」と思うなら、本当に800円の正月花でも十分だと思います。その家の正月のしつらえを決めるのは、その家の住人なのですから、世間や花屋が、「800円ではカッコがつかないでしょう」と言う筋合いのものではありません。
正月花を飾らない家だってあるのですから、800円かけただけでも立派なものです。
家によっては、
「軽く、かわいく正月花を飾りたい」とか、
「むしろ、あまりお正月テイストに走りすぎない花がいい」
というようなところもあるかと思いますので、800円で恥ずかしい、という意識を持つ必要は無いです。
しかし、「うちは、正月のしつらえは本格的にやりたい」と思うなら、800円程度では、多分役不足です。
複数の花屋で正月花の販売を経験した私の感触からしますと、お客さんが一番気軽に買っていく正月束の値段帯は、1,500円~1,800円くらいです。
買う側の心理を想像すると、最低ラインよりは上の、1,000円超えを買いたい、そこで1,000円台のものを色々見ると、1,200円や1,300円はやはり見劣りする、1,500円から上くらいがいいのかな……ということになるのではないでしょうか。
2,000円まで出すのは、ちょっとためらわれるのでしょうね。一般家庭に、あまり高い花を飾ってもしようがないかな……という思いもあるのでしょう。
1,500円より上の束なら、松が入っていることが多いので、そうなるとお正月らしさは出しやすいです。
ただし、1,500円くらいだと枝物が複数入ることを期待しない方が良いです。松と梅とか、松とロウバイとか、枝物が二種類あると非常に格好をつけやすくなるのですが、それはもう少し値段が上になってきます。
1,500円では、二種類の枝ものが入っていたとしても、片方がごく小さな柳などになるでしょう。花の方では、蘭や、大型のユリなど、「高級」を感じさせる花ものも、まず入っていないと思ってください。
しかし現実的には、1,500円~1,800円くらいが、一番一般的というか、買い易い束であるようです。1,500~1,800円くらいの束に、単品を追加して買っていく、というお客さんも多いです。
《参考》管理人が、リアルに買ってみた1,500円の正月束の内容は、こんな感じでした→実例:「1,500円のお正月束」
普段の日に、家の玄関用やリビング用に、2,000円分の花を買っていく人はそうはいません。しかしお正月花は、2,000円束・3,000円束も、かなり普通に買っていかれます。また、1,200円くらいの束を買って、それに色々足していくうちに2,000円をどんどん超えていく、というお客さんもよくいます。
その証拠に、値段別になっているお正月束の、「3,000円」のバケツにの中にいくつの束が入っているか、花屋の店頭でチェックしてみてください。一つや二つではなく、たくさんの束が入っていると思います。売れる見込みがあるから、それだけスタンバイさせているのです。
なので、お正月束で、2,000円くらいだと、それほど「張り込んだ」とも言えないのです。もしも、気の張るお客さんが来るので、お金かけて格好をつけないといけない、というようなことがあるなら、3,000円から上くらいが無難です。
また、「ちょっと贅沢なクラスの正月花を生けよう」と思うときも、やはり2,000円より上のゾーンを見るほうが良いでしょう。
値段が2,000円を突破すると、松が若松以外になったり(もっと本格派の松になります)、花ものが単価の高いものになったり、枝物が複数組み合わされるなど、それなりの内容になってきます。
いけばなの技術を持っている人が、腕を振るいたいと思った場合には、2,000円より上の正月束で、ようやくやりがいのあるものが生けられるくらいの内容になります。
参考までに書きますと、いけばな教室の「お正月花稽古」のときの花材費は、2,000~3,500円くらのゾーンが一般的です。私個人の、2022年暮れの正月花稽古は、「花材費2,000円」でした。どうぞご参考に。
お正月花に限っては、5,000円から上の花もよく出ます。花屋の売り上げが上がる2大イベントとしては、母の日とお正月があるのですが、5,000円以上の商品が出る率は、お正月の方が高いように思います。
ただ、5,000円を超えてくると、いわゆる「自宅用切花束」よりも、アレンジメントにセットしたものを買う人の方が多くなります。
このページでは、主に「花屋でセットされた、お正月切花束」について書いていますが、人によっては、
「私は、ひとつひとつ自分で花を選びたい。組まれているセットは嫌だ」
ということもあると思います。しかし、お正月花材は、単品を選ぶよりも、セット束の方がかなり割安なので、普段セット束を推奨しない私でもこれをおすすめいたします。
もちろん、本当は単品で選ぶほうが良いと思います。私も、値段を考えなくてもいいなら単品をすすめたいのですが、無視できない割安加減なので、花の情報局としては珍しくも「セット」をすすめさせていただきます。
※花材に、特に大きなこだわりがある方や、値段を気にしない方には、もちろん単品買いをお勧めします
お正月セット束は、基本的には一束をそのまま「一杯分」として使うように作られたものですが、複数の正月束を組み合わせたり、セット束に何かを追加することもできます。
反対に、生けるときに、一つの束を二つの器に分けることもできます。セットではありますが、生ける人が好きなように足し引きできます。
自分の都合の良いように、どんどん自由な使い方をしてみてください。
正月花を、庭から切ってきたら、買わなくても入手可能になります。
花ものなら、そのときに咲いているものを切って生けることができます。季節的に、あまり多くの花が咲いている時期ではないのですが、運よく咲いているものがあれば使ってみましょう。正月花のようなハレの花だからといって、庭からの調達を遠慮することはありません。家で咲かせた花で年神様をお迎えするのも素敵ではありませんか。
もしも、家に松の木があるなら、それも切って生けることができます。
松は、暮れに植木屋を呼んで切らせる家もあるでしょうから、そういうときには、「切り落とした枝を捨てないでくれ」と頼んでおいて、使えそうなところを選んで使いましょう。短い枝も、盛り花の足元を埋めるのに使ったり、小さな花瓶に花と一緒に入れて「ミニ正月花」を作ったり、色々と活用できます。
自分で松の枝を切るなら、可能であれば生け易そうなところを選んで切ってみましょう。(切った後の松が格好悪くならないように気をつけて)
私の家には、松の木はありませんが、人様の家の剪定枝なら、貰って生けたことがあります(ブログに画像を貼っています→松)。
普通の花ものに、松一本入るだけでお正月花に変身させることができるので、細い枝一本でも、あると無いでは大違いです。