普段は花バサミを持つことも無いような、まったくの素人の方向けの記事です。いけばな経験者の方は飛ばしてください。
正月花を生けようと思っても、何から手を付けていいか分からない方は、どうぞご参考に。
当サイトでは、正月花の松について、「素人の自覚がある人は、とりあえず松は立てておこう!」という作戦を推奨しています(簡単に正式風に見えるからです)。
しかし、本当の素人の方からすると、「松を立てる」こと自体が難しいことが多いです。そして、松の中でも特に立てにくいのが、大きく松葉が広がり、頭でっかちな大王松です。
ずぶの素人だというのに大王松を入手してしまい、生け方・立て方に困ったら、下記の記事を参考にしてみてください。
大王松とは、当サイトでも何度か紹介していますが、正月花や、いけばな作品などによく使われる松の一種です。(参考:自分が使った花材事典 大王松)
大王松は、いけばなを少し勉強した人には、とても人気のある松です。管理人自身も、大好きな枝ものです(何度か花展で使っています)。
↓こんな風に、大きく広がる松なので……
普通の松と違う特別感がありますし、派手にもできます。しかし、その「特別」な部分が、素人の方には扱いにくさの元になります。広がりすぎて収拾がつかず、しかも、剣山に立てても立てても倒れれてしまう、ということになったりします。
そんな大王松を、素人の方が偶然手に取ることはあまりないかもしれません。暮れに花屋で売られる「お正月束」の、一番安いものを買っている分には、大王松とは出会えません。大王松は、若松などと比べると、少し上のお値段なので、あまり安い束には入らないからです。
でも、手にとる機会がもしもあったらどうするのか、という話を、この記事ではしていきます。
上にも書いたように、大王松は、素人の手では、なかなか立ってくれないことがあります。
誰にでも立てやすくするためには、「だいぶ短く切る」という手もあるのですが、この記事ではその手は使わないことにします。個人的には、切るのを悪い方法とは思いませんが、素人の人は、
「もったいなくて切れない」
「切る適正な位置が分からない」
などの理由で、あまり切りたがらないことが多いので、この記事では、なるべく切らない方向で話を進めたいと思います。
しかし、切らずに長いままでただ剣山に刺すと、だいたい下のようにひっくり返ってしまうものです。
何の工夫もなく、長い大王松をただ剣山に刺したらこうなります。
こうならないために、プロは色々な技術を使うのですが、そんな技術も知識もない素人さんは、単純で簡単な方法で、「ひっくり返らせない」状況を作りましょう。
嫌でもひっくり返れない、立つしか道はない、という状況を作れば、大王松だろうが、ほかのどんな松だろうが、必ず立ってくれます。難しい技法は使わずに、その状況を作るには、下のような方法があります。
一番簡単な方法はこれだと思います。
松の枝がちょうどはまるくらいの大きさの口の器なら、誰が挿しても枝は立ちます。
↓必ずこうなります
こんな格好の花器なんかうちには無い……と思うかもしれません。しかし、ここで問題にしているのは、「花器の形」ではなく「口の大きさ」と「松を支えられる重量があるかどうか」です。「松と、数本の花が入る程度」の大きさの口の花器で、松の重みでひっくり返らないものが、押入れの中にでも眠っていませんか? もしもあるなら、それを使うのが松を立てる早道です。
上の項では、大王松を、高い位置でパッと開くように挿しました。この位置は、まあ順当だと思います。なるべく鋏を入れずにただ挿すだけで乗り切ろうとするなら、この位置は楽なのです。(いけばな家の手にかかれば、もっともっと多様な大王松の生け方があります。しかし、ここは困っているど素人の方のための記事なので!)
では、例として、上の項で松だけ挿した花器に、ほかの花材を入れて一作完成させてみることにしましょう。花の挿し方も、誰にでもできるようなものにしてみました。
松が大きく開いているので、花や葉っぱなどは根元のところを引き締めるように小さめに入れるだけにしました。
使った花材は、黄色い菊(ホマロ)と、赤い実のついた万両です。松葉の広がりを邪魔しない長さに切って挿しただけです。
素人手でこのくらい生けたら十分ではないでしょうか。
上の画像の白い花器は、あまりにも都合の良い口の大きさでしたので、「もっと口が大きいのはどうすれば?」という声もあるかと思います。
なので、もう少し大きい口の花器の例も出してみましょう。
この器を使います。この器は、上に例に出した白い器よりも口が大きいので、ただ挿しただけだと松が直立しません。
↓こうなります。
枝が、少し横に倒れることになります。
私だったら、この「横に流れる形」を利用して生け進めるような気がしますが、素人の方だと、動きのある形を生かそうとしても、どう生かしたらいいのか分からないと思います。(真の素人さんであっても、「傾いたこの形で私は生けたい」と思ったら、ためらわずにそうしてください。それをやめろと言うのが記事の目的ではありません)
傾いていたら扱いに困ってしまう、という場合は、当サイトの別記事でも推奨しているように、「とりあえず立てて格好をつける作戦」が良いです。
いけばなやフラワーアレンジの技法には、器の中に細工をして、枝を立たせる方法がいくつかあります。しかし、そんな難しいことは、素人が手を出すことではありません。もっと簡単な方法で立たせましょう。
倒れるのを邪魔するものがあれば、枝は倒れません。つまり、上の画像のように右方向に倒れてしまうなら、枝の右側に、「倒れ防止用の花や葉もの」を入れて邪魔します。
↓つまり、こうすればOK。
たった一本の万両を入れただけで、松が直立しました。これなら、だれにでもできます。
その代わり、「いかにも万両をつっかえ棒にしているな」というのが明らかなので、その部分が見えないように、菊で隠してしまいましょう。
↓すると、このようになりました。
この記事では、口の小さめの器で、松を含めて5~6本くらいの本数で、手軽に生ける例ばかり出しました。実際問題として、素人の方が余裕を持って生けられる正月花は、このくらいの規模の花ではないでしょうか。
しかし、この記事で紹介した二つの作戦、すなわち、
↑は、かなり使える作戦でして、もっと大きい器で、たくさんの花材を入れる場合でも有効です。
実際に、下の画像の花は、上記の二つの方法だけで松を立たせています。
これは、かなり大型の花で、これは素人の方に簡単にできるとは言いませんが、基本的に、やっていることは同じです。
松がひっくり返ってどうしようもないときには、どちらも有効な技です。