お正月の風習には、地方や各家庭により、かなり多様なものがあります。ある地方では常識とされることが、ある地方ではびっくりされることなど良くありますので、あまり一元的に、「これが常識」と決めるのは、やや危険かもしれません。
なのでこの記事では、限りなく一般的に、日本全国の、大抵どこのだれにでも通用するようなレベルの「常識・非常識」について紹介します。
※特定のいけばな流派や、お作法の流派が定める「忌み花」については触れていません
こちらの記事:正月花はいつ飾る? でも書いていますが、一般的に、「正月花は大晦日に飾るものではない」とされています。
しかし、実際には、大晦日に飾っている人は多いと思います。一夜飾りのタブーを知らない人だけではなく、知ってるのに大晦日に生けている人も、絶対にいるはずです。大晦日の前に生けたくても、大晦日にしかそのチャンスが無かった、という場合には、それしか仕方がないです。
つまり、一夜飾りのタブーを守るのも、気にしないとして無視するのも、無視したくないけど致し方なく無視するのも、生ける人自身の見識の問題だということです。でも、「一夜飾りはダメ」ということ自体は、常識として知っておいた方が良いと思います。(管理人自身は、こういうことに無頓着なたちなので、一夜飾り容認派です)
家にある一番高価な花瓶など、ぜひお正月花のときに活用したいものですが、その器の口がちょっと欠けているなど、キズがあるような場合は、使うことを避けた方が良いかもしれません。
「小さなキズなので、花で隠れる」
「キズの部分を後ろに回してしまえば分からない」
というように、十分隠して使えたとしても、神様をお迎えするものとしてはどうか、と考えたときに、ふさわしくないと思う人は、使うのは遠慮した方が良いです。
ただし、その家の人が、「まあこのくらいなら使っていいだろう」と思えるなら、使っても良いかもしれません。
つまりこれも、上の項と同じく、当事者の見識が、最後の結論を導くべきものです。
不安定な生け方で、正月から松がひっくり返っていては、縁起物でもなんでもありません。
また、実際はひっくり返ることは無くても、一見して「大丈夫なの?」と思うような不安定さを感じさせる花は、あまり正月花にふさわしいとは言えません。
いけばな・フラワーアレンジメントの世界には、表現のために、枝をねじ曲げたり、折ったり、花弁をわざとひっくり返したりして、植物に無理な形をとらせることがあります。また、枝などを、天地逆転させて、逆さに生けることもあります。
これらは、花飾り的には立派な技になり得るのですが、「無理やりなことをしている」「花がかわいそうだ」という印象が生まれるようなら、わざわざ正月花でそれをやらなくてもいいかと思います。
逆さ生けなどは、「ひっくり返っている=縁起が悪い」と考える人もいることを覚えておいてください。
(どうしてもやりたい人は、やって良いと思います。自分の家で、自分がそれで気持ちよく生けられるのであれば、要する嫌な気持ちになる人がいないのであれば、何も問題ないです)
正月花のタブーは、上記の4項のように、普通の感覚で考えればほぼ分かる範囲のものと思ってもらって大丈夫です。
普通に考えてタブーなことも、自分の家の中で、わかっていて破る分には、まったく問題ないくらいにゆるいものですので、あまり堅苦しく考えることはありません。
ただ家族の中に、神経質で、決まり事や正しい伝統や、縁起の良い悪いを気にする人がいるような場合は、上に挙げたものくらいは最低限守った方が良いです。うるさくチェックしてくるお客人が来るかもしれないような場合も同様です。