植物栽培の自由研究と言っても、結構色々なパターンがあります。台所のゴミからなにか育て始めるのも、種を買ってきて育てるのも、自然の中から採ってきたものを育てるのも、手軽な栽培セットを買ってきて育てるのも、全部「栽培」です。
夏休みの自由研究で育てるものとしては、最近は野菜が注目されています。
メジャーなのは、ラディッシュ、オクラ、ミニトマト、スプラウト類です。これらの野菜が人気な秘密は、一夏の間に「成長→開花→結実」という流れを観察できることや、一鉢といえども、「食べ物を作る」ことを体験できることなど、花を咲かせて鑑賞するのとはちょっと毛色が違い、子供さんにとって未知な領域を大きく含むからだと思います。
特に、スプラウトの水栽培は人気があります。栽培を開始すると速やかに発芽し、手も汚さずに室内で育てられ、発芽の様子が観察しやすく、失敗もまず無いという、お手軽なところがウケるのでしょう。
ただし、人気がありすぎて、誰でもやっているので、新鮮味が無いと言えば無いです。なので、観察日記の描き方を工夫するとか、少し変わったスプラウトを見つけてくるとか、何らかの独自色を出す努力をしないと、「平凡のきわみ」みたいになります。
平凡でもなんでもいいから、ささっと形にしたい、ということであれば、手軽なスプラウト栽培はお勧めです。
こちらの記事を参照ください→自由研究ネタに適した野菜はどれだ?
野菜を栽培する場合には、最後に収穫して料理するところまでやっても面白いです。
サラダにするくらいだったら、小学校低学年でも十分可能です。
夏休みの宿題には、スピードを求められることがあります。休みが終わり近くになってから着手したような場合や、「はかどらないと、興味や集中力が持続しない」というような場合は、開始したらすぐに何かが起こり、ささっと状況が変化していってくれることが望ましいのです。
そういうときに、レスポンスが早い植物として推薦できるのは、なんと言っても豆類です。
小豆、ささげ、大豆、ひよこ豆、緑豆、虎豆、パンダ豆etc
スーパーの、豆類のコーナーで買えます。安いものなら、100円程度で一袋買えます。餡子を作るようなときに買う小豆や、煮豆に使う大豆などは、生豆なので、水をやれば普通に発芽します。(もちろん、炒ったものは発芽しません!)
私は、実際に小豆やささげを発芽させて、いけばなに使っているのを、このサイトやブログに何度も書いていますが、本当に簡単に発芽しますし、水をやって数十分で、早くも種に変化が現れるので、飽きずに面白がって観察できます。
豆を、土に植えてもいいし、水栽培でもいいです。(水栽培の方が、種が給水してふくらみ、根が皮を破って出てくるところなど観察できます)
発芽させて、成長の様子を観察しましょう。発芽率は非常に高いですが、さすがに一粒だと失敗したときにやり直しになるので、5~6粒以上くらいまくのが良いのではないでしょうか。
豆は、育てていくと、花が咲いて実も付きます。
もしも、夏休みの期間中に開花にいたらなくても、夜になると葉を閉じる様子や、巻きひげが伸びる様子など、レポートするネタが色々あるので、それほど困らずに研究をまとめられます。
第一、「あの食べ物は、こういう植物なんだ!」という驚きがあるだけで、十分に研究の価値があると思います。
※豆類の種は、園芸店やホームセンターでも買えますが、スーパーで食品として買うほうが、量も多く、手近で手に入り、残った分を食べられます
具体的に、何の植物を選べばいいのか決めてほしい、という方のために、栽培が簡単で、自由研究ネタとしてはわりとよくある植物を、下に挙げてみました。(野菜のリストは、こちらに独立させました→自由研究ネタに適した野菜はどれだ?)
上記の植物を、種から育ててもいいし、苗を買ってきて育ててもいいです。種から育てないと自由研究にならないんじゃないかと思っている人がいますが、成長の様子をしっかり観察してまとめることができれば、必ずしも種からである必要は無いでしょう。
確かに、種から育てると、「種を植えました」「芽が出ました」というような、書きやすいイベントがあることはあるのですが、苗で購入したもののほうが育てやすく、総じて開花率も高いのです。植物の成長を見つめる目があれば、どこからスタートしても立派な観察です。
植物栽培に、エコ視点を持ち込むと、ただの観察に別の要素を加えることができます。
ガーデニング好きな人なら、「エコな園芸」というものは、全然珍しい話ではないです。エコ・ガーデニングは、大きく分けると、「再生系」と「省エネ系」があります。
再生系というのは、何かを再利用した園芸です。一番よくあるのは、エコポストで、生ゴミを堆肥として再生させるというのがあるのですが、自由研究のためにわざわざエコポストを買うのも大変なので(費用も、手間もかかります)、小中学生でもできるもっと手軽なものを下に紹介します。(たまたま、家にエコポストがあるお宅は、自由研究の題材になさるとよろしいと思います)
要するに、台所のゴミでできる自由研究です。
省エネ系のガーデニングは、主に節電、要するにグリーンカーテンです。グリーンカーテンが作れる植物は、
ゴーヤ、朝顔、風船かずら、スネールフラワー、ツルムラサキ、ヘチマ
などです。ただの成長記録ではなく、グリーンカーテンができてくることによって、室内の快適性がどのくらい変わってくるかなどを、一緒に記録します。
植物栽培を、簡単に、小奇麗に済ませたいと思うなら、開き直って栽培キットを使うというのもアリです。
栽培キットなら、必要なものはすべてパッケージにおさまっているし、変化のある成長を見せてくれるし、買ってしまえば後はおおむね簡単です。
ただ、自由研究としては、「既製品感」が大きいのが難点なのですが、「まあこれでもいいとしよう」と思える人には、オールOKだと思います。
どうしても既製品感が嫌だと思ったら、綿密に観察をしたり、独自性のある記録を書くことで、それを跳ね除けてしまってください。
栽培キットは、モノとしてかわいいことがほとんどなので、女の子などは、パッケージを見てやる気アップするかもしれません。
一つの植物を、ごく普通に育てて、それを毎日観察する……それだけでも、学校の自由研究としては十分だと思います。
しかし、本当に「研究」という言葉にふさわしいことにチャレンジしようと思うなら、何か特殊な状況を作って、普通の栽培ならやらないようなことを試してみると、より高度な仕上がりになります。
たとえば、同じ植物を別々の環境で育てて比較したり、普通の栽培では絶対に切ってはいけないように見えるところを切ってみたり、本来与えないようなものを与えてみたり、「栽培」としては本来はよろしくないようなことも自由に考え出して、恐れずに実践してしまえば良いと思います。
それで枯れてしまったらどうするのか?
枯れましたと、書けばいいんです!
なぜ、そうしようと思ったのか、実際にどうしたのか、その結果、どのように枯れたのか。本当に、その行為の結果枯れたのか? それらのことを詳細にレポートすれば、それはやっぱり「研究」なのだと思います。
花が咲くはずの植物が、そのせいで咲かずに終わってもいいではありませんか。花が咲く植物を植えて、「咲きました」が結末なんて、考えようによっては研究でもなんでもない、ただの「確認作業」だとも言えます。
独自な何かに挑んでいく行為は、貴重な体験になるでしょう。
上の項にも少し書いているのですが、もしも栽培に失敗して枯れてしまっても、「枯れたこと」に注目したレポートを書けば、何の問題も無いと思います。
ただし、「枯れました。おわり」では話になりません。枯れたことに、最大限の注意をはらって観察するのです。
なぜ枯れたのか、いつ枯れたのか、枯れるにはきっかけがあったのか、どんな様子で枯れたのか、対処する間もなく枯れたのか、対処したのにその甲斐なく枯れたのか、etc……注目するべきところはたくさんあります。
上記の注目ポイントは、実際にガーデナーが花を枯らしたときに、原因究明して後の糧にするために考えるポイントなのです。ガーデナー同士が集まると、「なになにが枯れた」で、いつまででも喋れます。
なぜなら、枯れるというのは、植物にとって大きなイベントだからです。「開花」や「結実」と同じか、むしろそれより大きいイベントなのです。「負」の要素が大きいからと言って、「枯死」という大きなイベントから目を背ける必要はありません。
「栽培の失敗」=「自由研究の失敗」ではありません。実験に着手し、何かを「見た」のであれば、「見たもの」が研究の成果です。
★栽培系以外の自由研究は、こちらでチェック→夏休みの自由研究テーマ