学校に通っている子供さんのいるご家庭では、「夏休みの間だけ、鉢ものが1個増える」ということがあります。それは、学校で育てていた植物の鉢を、休みの期間は家で世話をするようにと、一人ひとりの子供さんが持たされてくるからです。
ガーデニング好きの家なら、そんなものは何の負担でもありません。子供が学校で育てる植物というのは、基本的には育てやすく、枯死のリスクが少なく、ほうっておけば花が咲くものが選定されているからです。
しかし、ガーデニングに無縁の親御さんは、扱いに困ってやたらに水をやったりして、本来「子供でも育てられる」ものを枯らしてしまったりします。
この記事では、子供さんが持ち帰ってきた鉢ものに、どんなことが起こりうるのか、困ったことが起こったらどうすればいいのか、もしも最悪の結果=枯死をむかえてしまったときにはどうすればいいのかなどを、なるべく分かりやすく解説しようと思います。
また、そもそも持ち帰り方をどうするのかについても解説します。
夏休みに家に持ち帰ってくる可能性が高い植物を下に挙げ、それぞれの栽培方法が詳しく案内されているサイトにリンクしてみました。
※下のリンク先の「育て方」を見て、「完全にこのとおりにやらなければならないのか」と思う必要はありません。嫌なら見なくても、全然問題ありません。参考程度のものです
上記以外の植物を持ち帰った場合も、ちょっとネットで検索すれば育て方を探せるはずです。学校で育てる植物が、そんなにマニアックなもののはずがないです。
学校によっては、子供が鉢を持ち帰ってくるのではなく、「親が鉢を取りに来て」というところもあるようです。小さい子供さんだと、鉢を持って歩くのが負担だからということなのでしょう。
そういうときに、仕事を持っているお母さんなどは、なかなかすぐには行けないかもしれません。しかし、可能な限り早く行ったほうが良いと思います。そうしないと、水やりが十分にされていない可能性があります。取りに行ったら枯れてた、ということも有り得ます。
皆さん忙しいでしょうが、可能な範囲で早く行ったほうがよさそうですよ。
鉢の持ち帰り方(=持ち運び方)は、鉢より少し大き目の、マチのある袋に入れて下げて歩くのが一番簡単です。そのまま袋に入れても大丈夫ですが(それほどデリケートな植物は選ばれていません)気を使って丁寧に運びたい人は、鉢の周りをぐるっと新聞紙で囲んでテープなどで留め、その状態で袋に入れると良いです。
可能であれば、袋に入れるか新聞紙などで包むかした状態で、両手で抱えるようにすると一番運びやすいのですが、他に荷物があったり、鉢の大きさ的に抱えられない場合は、上記の方法で手で下げて歩いてください。
車で行く場合は、車に段ボール箱を積み、その中に入れてくれば、袋に入れる手間も紙で包む手間も要りません。
家に鉢が来ても、恐れることはありません。もともと小学生にも育てられるような植物なのです。
それに、特に立派な栽培を目指す必要もありません。普通に世話をして、普通に育ってもらいましょう。
植物の世話は、大体、下記のようなことだけで済みます。学校で育てるような植物なら、種類を問わずに通じる方法だと思ってください。
もしもできれば、水をやるときに毎回株を観察して、いつもと違うことが起こったら速やかに察知できるようになるといいんですが、これはガーデニングに何らかの興味を持っていないと難しいので、「絶対にやれ」とは言いません。(子供を持つお母さんは、子供さんが何も訴えなくても、「あれ? 熱あるんじゃないの?」とか分かりますよね。その感じを、ガーデナーは植物でできるようになれます)
上の項に、8個の箇条書きで、基本的な植物の世話のことを書きましたが、よく見ると、やることは二つだけしかないのです。
「なるべく日当たりの良いところに置き、土が乾いたらたっぷり水をやる!」
これだけです。
管理人自身が家でやっているベランダガーデニングも、ほぼ「なるべく日当たりの良いところに置き、乾いたらたっぷり水をやる」ことだけを実践しています。これだけしかしなくても、そんなに困ったことは起こりません。
ほかのことは、何か対策をしなければいけないような事態が起こったときに考えればよいと思います。
管理人の場合、3泊くらいの不在は、出かける日にたっぷり水をやるだけです。帰ってきたら、いくつかの植物が水切れ状態になっていますが、帰宅してすぐに水をやると復活します。うちは、あまり繊細なタイプの植物が無いのと、「枯れてしまったら、あきらめよう」と思っているので、これで十分です。
一般的には、自動給水グッズを使うのが一番簡単です。そういうものが、100均にも売っていますので、探してみてください。
↓こういうようなものです。
上の画像のキャップを、水を入れたボトルの口に取り付け(ペットボトルにも取り付け可)、さかさまにして鉢に刺します。すると、毎日少しずつ水が土中に給水されるというものです。ガーデンニング好きさん用には、もっと高度な時間設定や、湿度感知をしてくれる給水機などあるのですが、子供さん用の鉢一つの対策なら、100均もので十分です。
器用な人は、空き容器などで似たものを自作すれば、100円さえもかかりません。
もしも、近所に家族、親戚が住んでいるなら、その人に水やりを頼むのも良いでしょう。ただ、仲の良いお友達に頼むのは、なかなか微妙です。
「留守宅に出向いて何かすることを任される」
というのは、人によっては大きな負担になります。頼むなら、こちらが何も言わないうちから、
「水やりくらいしようか?」
と言ってくれる人に限ったほうがよさそうです。
植物がぐったりしていると、あわてて水をやる人がいます。
水をやるのを忘れてたなら、上記の行為は正しいです。しかし、「今朝もたっぷり水をやったのに」という状況なら、水切れではないことが原因でぐったりしていると思うべきです。
真夏の、30度も超える日の直射日光は、植物をぐったりさせることもあります。暑さで葉っぱを下げているなら、水をやっても無駄です。そして、そんな暑いさなかに水をやっても、土中でお湯になって根を痛めます。
こんなときは、土が乾いているかどうか見て、もしも乾いていたら、夕方涼しくなってから水をやってください。
また、結局、やることは二つだけ!の項にも書いたように、水は、やるならたっぷりです。人間の場合、「真夏はこまめに水分補給」ですが、このイメージを、植物に適用するのはやめましょう。植物は、
「ちょこちょこ何回も飲まない。朝1回ぐいっと飲む」
というイメージを持ってください。
また、園芸書など見て、子供さんが持ち帰ってきた植物の育て方に「水は控えめがよい」という表現がされている場合に、これを誠実に実行しようとして、一口分くらいの水しかやらない人などが、本当にいます。植物にしたら、それでは飲んだうちに入りません。その場合の「控えめ」とは、「水をやる頻度を控えめにし、水をやるときにはたっぷりとやる」という意味だと解釈してください。
成長しないなら、しないなりに観察するのも一つの道です。子供さん自身が気にしていないようなら、特に対策を講じなくても良いかもしれません。
よく成長させるために対策するなら、以下のようなことを考えてみてください。
※参考……植物全般に効く肥料
対策する前に、「本当に成長していないのか」と、一度は考えてみてください。その程度の成長スピードの植物かもしれないのです。
また、同級生の家で、「○○ちゃんの鉢は、もう三倍くらいの背丈になってる!」というのを見てしまっても、そっちの鉢が異常かもしれないのです。それに、2~3倍くらいの差は普通にある植物かもしれませんし。
要するに、少しくらい成長不良でも、おろおろしなくて良い、ということです。
花が咲くはずの植物に、一つも花が咲かなかったような場合、基本的には上の項と同じ対策を試してみてください。
上の項にも書きましたが、よその子の鉢より、少しくらい花の数が少なくても、「うちのはおかしい!」と思う必要はありません。生物には、個体差があって当然です。
また、対策したのについに一つの花も咲かなかったという結果になっても、それを観察するのがクールな理科の学習だと思います。「咲かなかった=残念」ではありますが、「咲かなかった=無意味だった」ではありません。
葉っぱに穴があいたり、葉の縁が欠け始めたりしたら、十中八九虫に食われています。葉っぱは、強風などで傷つくこともありますが、複数の葉でそれが起こり、しかも日を追うごとに増えていくようなら、完全に虫です。やわらかい新芽のあたりで特にそれが起こるなら、もう絶対に虫です。
そんなときには、薬剤を使いましょう。虫が苦手でない人は、虫を見つけて「捕殺」という、環境にやさしい対応をとっても良いですが、そうでなければ薬剤に頼りましょう。
もともと家にあったものを使うか、新しく買うなら、虫にも病気にも、幅広く効くタイプの薬剤で、手に入りやすいものを買えば良いです。
特定の薬剤のお勧めはありませんが、便利と思うのは、「うどんこ病」と「アブラムシ(アリマキ)」の対策ができると明記されているスプレー剤です。たとえば、こういうものです→うどんこ病・アブラムシに効くスプレー式
アリマキとうどんこ病は、素人ガーデニングの最大の敵ですし、スプレー式は手も汚さずに、薄めたりする手間もいらないので、手軽です。
安全性にこだわるなら、食品成分を使用した薬剤を探してみると良いです。たとえば、このような薬剤があります→食品成分のスプレー式薬剤
上の項にも書いた「うどんこ病」というのは、葉の表面などが、白く粉を吹いたようになる病気でして、非常によくある植物の病気です。ガーデナーで、自分の家でうどんこ病が発生したことが無いという人はいないと思います。
うどんこ病は、葉っぱ一枚から広がりますし、同じ植物の別の固体に伝染するので、かかってしまったらしっかり対策する方が良いです。上の項で紹介したようなスプレー剤で撃退しましょう。
朝顔の葉などは、もともと斑入りのものだと、葉っぱに白い部分がありますが、うどんこ病の白は、もっとモワモワの白なので、ちゃんと見れば区別できます。「見ても分からない」という人は、
「白い部分のある葉っぱがいくつかでき、その葉っぱだけが枯れてきたら、うどんこ病と断定」
でいいと思います。
きゅうり、トマト、ナス、オクラなどの野菜類は、比較的実らせやすく、食べるのが間に合わないほど収穫できることもあります。
しかし素人が、しかも子供が、がんばって野菜栽培をしたなら、一個でも実ったら「大成功! お見事!」でいいと思います。
がんばってお世話しても枯れてしまったら、それは仕方ありません。観察日記には、
「こんな状態になって、あんな対策と、こんな対策をしたけど枯れました」
と書くしかありません。妙な枯れ方をした場合は、できれば原因究明して、「これこれのために枯れたようだ」というところまで書けると、大変科学的なレポートになります。上の項の「花が咲かなかった場合」と同様に、枯れてもそれを無にしないことが重要です。
また、枯れてしまっても、それが栽培の失敗で枯れたわけではないこともあります。朝顔などは、8月も下旬になったら枯れ始めてもおかしくありません。枯れ始める時期は、個体差と環境でズレがあるので、「お隣の朝顔はまだ枯れる気配もないのに、うちのはおかしい」などと比較しなくても良いのです。
なので、枯れたからと言って、必ずしもがっかりする必要はありません。花が咲き、実が付いたのなら、植物が終活しはじめるのは当然なのです。植物の側には、「夏休み明けまでがんばる義務」などありません。8月末に線を引いているのは、勝手な人間の都合です。
明らかに時期が来て枯れたのではなく、何かがうまくいかなくて枯死したのだ、という場合、休み明けに鉢をどうしたらいいのかは、学校からの指示に従いましょう。(多分、枯れてもそのまま持ってきてとと言われてる気がしますが)
これは、私自身が経験したことなのですが、友人に、
「子供が学校から持って来たオクラが元気ない」
と言われ、写メを見せてもらったら、オクラではなかったことがありました。確か、ミニトマトだったと思います。
話を聞いてみたら、数種類の植物の中から、自分が育てたいものを申告し、その種を先生が配ってくれたということで、どうやら先生が配るときに間違えたようなのです。
子供も親も、オクラらしからぬ育ち方(オクラと違って、ミニトマトは自立しません)だと気づいていながら、「変な育ち方になっちゃった」のだと思い込み、別の植物である可能性など思いもよらなかったようです。
もしも、学校からもらったプリントの写真やイラスト、または、本に載っているその植物の写真、ネットで見つけた画像などと、かけ離れた姿をしていたら、「本当にその植物なのだろうか」と疑いましょう。その結果、「自立できないほど不健康なオクラ」ではなく、「ごく普通のミニトマト」であったことが分かることもあります。
ガーデニング素人の方から、植物の栽培がうまくいかないと相談を受けるときに困るのが、何を聞いても、すべて漠然とした情報しかないことです。
興味がないとそうなってしまうのでしょうが、あまりにも薄い情報だと何のアドバイスもできませんし、何がおかしいと思っているのかも漠然としていると、正直、「その状態のどこに問題があるんです?」というレベルのかみ合わない会話もあるのです。
その割りに、素人さんは、「一言ですべてを解決する答えを教えてもらえる」くらいの気持ちでいる様子が見受けられます。期待にこたえたいと思えば思うほど、こっちは困ってしまいます。
分かる範囲で、以下のことをご申告ください。
分からないことは、「不明」でいいです。また、植物の写メを撮ってガーデナーに見せると、役に立つこともあります。
休み明けに鉢を再び学校に持って行くなら、持っていきやすい体裁にしておきましょう。
蔓になるものは、庭の柵や、ほかの植物などに自由にからませてしまうとはずすのが大変なので、最初から絡まないようにさせておきます(からまないような場所に置くか、からんでいるのを見つけたらはずしておく)。
また、学校に持っていく前日あたりに、枯れた葉や、花がらや、見た目に汚いようなものが付いていたら取っておきましょう。