※前の記事からご覧ください。
花屋で売っているお正月花の束を、なるべく苦労せずに生けてみましょう。
ギフト用花束でも、仏さま用の束でも、みんなそうなのですが、花屋さんの店頭で、花屋さんの手で組まれて売っている束というものは、「そのまま器に入れるだけでもOK」なように作られています。(もちろん、自分の好きなように生け直しても大OK)
なので、正月束も、同じように考えて問題ありません。
花屋さんの手で作った束を、家で生けるときに考えるべきことは、器の大きさと、器の雰囲気です。
小さい花瓶に、大きい花束を無理やり押し込んでもおかしいですし、その逆もおかしいです。また、春の花を、紅葉の絵柄の付いた花瓶に入れるようなことも、なんだかおかしいものになります。ミスマッチを楽しむ腕や余裕のある方なら、本来は合わないような器にうまく飾れることもありますが、素人がただ花を放り込んでミスマッチだと、せっかくの花の魅力が損なわれてしまうこともあります。
そのために、前の記事では、花材と器のバランスを見ることを、8例も挙げています。
花と器のバランスがよく、花の向きが間違っていることさえなければ、「見られない花」になることは、まあありません。専門家はいざしらず、素人の花生けは、このポイントさえ押さえれば、結構楽しく、満足して花が生けられるものです。
下の項では、花材とバランスの取れている器で、「正月束を、そのまま花瓶に入れる」ことを実践してみようと思います。
まずは、文字通り、束をそのまま花瓶に放り込んでみました。
このままだと、「突っ込んだだけ」なのが、素人にも分かります。
全体が変に突っ立っていて、そこから千両が一本だけバラけて横に伸びています。さすがに、このままでは違和感が大きすぎるので、束全体をふわっとほぐし、横に出てしまう千両が「一本だけ飛び出している」印象を弱める工作をしてみることにします。
下は、「全体をほぐして余裕を持たせ、飛び出た千両を真ん中に寄せた」様子です。つまり、手先だけでざっと整えたような状態です。この段階では、まだ鋏を使っていません。
↑ただほぐしただけでも、大分まとまりができてきました。実際に、このくらいの飾り方をしている人は、世の中にたくさんいます。
しかしせっかくなので、もう少し体裁を整えてみることにしましょう。上の画像で、最も間延びしている部分は、器の口元のすぐ上辺りが、何の花もなくて葉っぱばかりなところです。ここを何とかしてみましょう。
ようやく鋏を使います。上記の「間延び」を解決するために、菊をカットしました。
10センチ強くらいカットしました。いけばな慣れしている私としては、本当はもっと切りたいところなのですが(もう10センチいってもいいくらいです)、素人の方は、なかなか思い切って切れませんので、抑え目のカットにしてみました。
10センチ切っただけでも、印象はかなり変わり、さらにまとまった花になってきたと思います。
いけばな慣れした人として更に言うと、菊の長さに長短を付けるともっといいのです。しかし、ここでは、あえて「同じくらいの長さにカット」してみました。(長短を付けてみたいと思った人は、とりあえず一本を短くしてみましょう。それだけでも、また印象は変わります)
大分まとまってはきましたが、菊を短くしたために、今度は千両が妙にほかの花材から離れてしまっています。もう一度鋏を持って、千両の長さを調節してみましょう。
千両を、菊より少し高いくらいになるように切り詰めました。
こうすると、一応「花材が、なんとなく真ん中に集まっている」という状態になります。このくらいなら、十分家庭で飾れます。
生け慣れている人からすると、銀柳ももう少し短くして、もっとほかの花材と馴染むポジションに入れたくなると思います。更に、菊を全体的に8cmくらい切り、その中の1本をもう一段短くし、それにあわせて千両と松も少しずつ短くする、くらいのことはやりたくなります。
しかし、この記事では、「もっとも少ない手間で、見られる程度の格好にする」ことを目指しましたので、上のような花の姿で終わりにしてみました。
手順を書くと、
「正月束を、包装を取ってすこし広げ、菊を10センチくらいカットし、それにあわせて千両もカットした」
という、大変に簡単なことになっています。
このくらいのことなら、大抵誰にでもできる作業です。素人の方でも、ここまでなら苦労しないで到達できるはずです。
※「うちには水盤があるので、せめて正月だけは水盤に生けたい」と思っている方は、次のページをご覧ください。